QSE

原子核システム安全工学講座
核エネルギーフロー環境工学分野 (新堀・千田・関 研究室)

研究の最前線から
地圏環境への理解を基に、核種閉じ込め
“バリア”性能を高める材料の研究・開発にチャレンジ!

大量発生が予想される低レベル放射性廃棄物。

 原子力エネルギーの利益を享受する上で、避けて通れないのが放射性廃棄物の問題です。原子力発電所や原子燃料サイクル施設から出る放射能を帯びた廃棄物は「高レベル放射性廃棄物」と「低レベル放射性廃棄物」に大別されます。前者は、新聞・テレビなどのメディアを通じてしばしば見聞きされるかもしれませんが、物量としては圧倒的に後者のほうが多いという特徴があります。今後、東京電力福島第一原子力発電所にある6基すべてのプラントは廃炉措置がなされますが、施設の解体撤去に伴って金属廃棄物やコンクリート廃棄物など、放射能レベルの低いものが比較的短期間に大量発生すると予想されます。

 低レベル放射性廃棄物は、放射能レベルや特性に応じて、区分され、それぞれ安全適切な処理・処分方法が採用されます。

  1. 放射能レベルの比較的高い廃棄物(制御棒や炉内構造物):余裕深度処分(地下50~100メートルに作られる人工構造物に搬入され埋設)
  2. 放射能レベルの比較的低い廃棄物(廃液やフィルター、消耗品):浅地中ピット処分(地下約10メートルのコンクリート製の収納施設に搬入後、施設ごと覆土され埋設)
  3. 放射能レベルの極めて低い廃棄物(コンクリート、金属):浅地中トレンチ処分(地下数メートルにそのまま埋め立て処分)

 土壌や地層といった天然のバリアと、囲壁構造物やコンクリートなどの工学バリアが、人間環境から長期間・安全に隔てる手段として機能します。そのためバリアの健全性や安定性の評価が重要になります。

核種を吸着するセメント系材料の特性に着目。

 核種を閉じ込める化学的バリアとしてセメント系材料に着目しています。新堀研究室では、セメント系材料の主要構成成分である「カルシウムシリケート水和物(以下C-S-Hゲル)」が、陽イオンと陰イオンの相方を吸着することに着目。そうした相互作用を利用して、閉じ込め性能をさらに向上させるバリア材(セメント由来二次鉱物)の開発と評価に取り組んでいます。

 また、地下の環境を考慮すると、地下水の成分(特に塩分濃度)によりC- S-Hゲルの核種の吸着特性が変化する可能性も考えられます。新堀研究室では、私たちの足元を構成する地圏環境の物質移動、熱移動への知見を基に、最先端の分析装置を用いて、C-S-Hゲルの変質に及ぼす影響因子を明らかにすることに挑んでいます。

 放射性廃棄物の研究は、半減期を考慮した保管管理が求められるため、超長期の時間軸を想定しなければなりません。また、世代をまたぐ事業であり、知識や技術の継承を視野に入れる必要があります。未来へとつなげる研究を――新堀研究室の合言葉です。

研究の最前線から

処分場建設による地下環境の変化とケイ酸の挙動

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